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目的


本研究プロジェクトの目的は、国立台湾大学との連携により「環境理解の社会認知生物学」という新しい研究分野を確立するための国際共同研究プロジェクトを企画・立案し、研究を開始することである。 認知神経科学の中核をなす知覚や記憶の研究の目的の一つはヒトが環境を理解するメカニズムの解明である。そのためには、物理環境認知と社会環境認知の両者を融合した理解およびその生物学的基盤の解明が必要だが、これまでそれらの研究分野間の交流が少なく、認知の生物学的基盤の研究は物理環境研究に偏っていた。しかし、本来的に環境を物理環境と社会環境に分離することは不可能で、我々はそれを一体のものとして認知している。このため、物理環境と社会環境を融合した研究の枠組みを確立し、その生物学的基盤を解明することが望まれる。 京都大学と国立台湾大学は、それぞれ、社会環境認知研究と物理環境認知研究の強い連携、生物学的基盤の解明を重視した研究体制という強みを持つ。両者が連携し双方の強みを融合することで、「社会認知生物学」という新たな分野の創成が期待できる。2年間のプロジェクト期間中は「環境の理解」というテーマのもとに具体的な共同研究を推進しながら、新分野創成の基盤の確立を目指す。



概要


本プロジェクトは、2014年9月に開催された本学と国立台湾大学との共催国際シンポジウムが発端となっている。このシンポジウムに参加した国立台湾大学の研究者から、認知神経科学をテーマとした研究者交流について本学の研究者へ打診があり交流が始まった。同年12月には、国立台湾大学の研究者チームが本学を訪問して連携に関する議論し、2015年9月に、国立台湾大学において、京都大学チームと共同で国際シンポジウムを開催、ここで本研究プロジェクトの概要が議論された。 認知神経科学分野では、ヒトを対象とした心理学的なアプローチと動物を対象とした生物学的なアプローチは独立に進められることが多い。また、その研究対象は、当初の知覚・記憶といった認知機能から対人認知、情動などへと拡張しているが、研究分野間の交流は必ずしも活発とは言えない。その中で、国立台湾大学は心理学的なアプローチと生物学的なアプローチを密に連携して進めてきたという特徴がある。他方、京都大学は、社会性や情動を含む社会認知神経科学とより基礎的な認知神経科学研究が強く連携してきた。こうした両校の特徴に加え、視知覚、視覚認知研究の分野で双方の研究テーマが共通し、すでに共同研究が開始しつつあるという現状がある。 こうした状況を踏まえ、本研究プロジェクトは視覚認知神経科学分野の共同研究を中核とし、国立台湾大学の強みである生物学的アプローチ、京都大学の強みである社会認知神経科学を相補的に組み合わせて、「環境の理解」を多角的な観点と方法論から解明することを目指す。両大学の認知神経科学研究プログラムを連携によって相互補完することにより、世界的にもユニークな研究拠点の確立が期待できる。例えば、機能的脳イメージング研究に関しては京都大学が機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた研究が中心であるのに対し、国立台湾大学では脳波や脳磁図(MEG)を用いた研究が中心的に進められているが、これらが統合されることでより説得力のある研究成果を挙げることができる。